銃刀法改正・刃物について

刃物の販売をしていると必ず聞かれるのがこの銃刀法に関する事です。
「名前は知っているけれどこまかいことは良くわからん。」と、言う方のためになるべくわかりやすくこの法律について書いていこうと思います。お暇なら付き合ってくださると幸いです。

銃刀法の概要

正式名称「銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年3月10日)」
ナイフなど刃物類は社会生活上において、欠かすことの出来ない道具の一つです。
しかし、だからといって自由な持ち運びを許可するとその道具を凶器として使用してしまう人が出てきてしまう可能性が出てきます。社会通念上こうした凶悪犯罪に使用されるケースや、暴動・内乱で武器として持たれる可能性がある以上、公共の治安維持や刃物をもつくとによって発生するかも知れない事故防止の意味も含め、一定の裁量をもうけ危害防止と安全確保のために制定されました。

制限を受ける刀剣類〔条例2条2項より抜粋〕

簡単に言えば【刃渡り(刃先と鍔元までを線で結んだ距離)が6cm以上の刃物は理由も無くそれと解る(すぐ使用できる状態)で携帯してはならない】と言う事です。(一部例外もあります)
これ以外に持っているだけ(所持・携帯)で捕まってしまうのが刀剣類です。銃刀法では以下の物を定義としてあげています。
・ 刃渡15cm以上の「刀」
・ 刃渡15cm以上の「剣」
・ 刃渡15cm以上の「槍&薙刀」
・ 「あいくち」(刃渡りの制限なし)
・ 「四十五度以上に自動的に開刃する装置を有する飛出しナイフ」(25cm〜30cm位が限度らしい〔過去の判例より〕)
これらはそれと解る形のものなら全て当てはまります。ただ、例外として
「刃渡り五・五センチメートル以下の飛出しナイフで、開刃した刃体をさやと直線に固定させる装置を有せず、刃先が直線であつてみねの先端部が丸みを帯び、かつ、みねの上における切先から直線で一センチメートルの点と切先とを結ぶ線が刃先の線に対して六十度以上の角度で交わるもの(肥後の守等?)」は除外されます。
ちなみに違反すると「3年以下の懲役または30万円以下の罰金」を課せられます。
誤解されるかもしれませんが、これは一応のボーターラインとして制定されています。刃渡り6cm以下の物でも理由無く腰に携帯したりしていれば銃刀法違反でしょっ引かれる可能性があります。くれぐれも携帯する場合には注意してください。

参考:刃渡り

刃渡りは刀剣類(刀・剣・あいくち・飛び出しナイフ)に用いられる概念で、切っ先と棟区(刀身の握りが始まる辺り)を直線で結んだ距離になります。槍は穂先からけら首(塩首)までを直線で測った距離を指します。日本刀は反りがあり計った直線が刀身を通らないため、刃渡りといわれます。
刃物は総理府令にてその測り方が決められています。
いわく「刃物の切っ先(刃体の先端)と柄部における切っ先にもっとも近い点とを結ぶ直線の長さを測ることとする」とされています。通常は切っ先(ポイント)と柄初(ヒルト)の直線距離を測れば良いのですが、刃の部分が変形していたりすると長さが変わってくるので、この場合はそれの最大値を出して刃渡りとします。ちなみにナイフなどで刃がついている部分が直線で6cm未満であったとしても、柄の始まりの部分まで測るので6cm以上あると判断される場合があります。注意しましょう。
スケルトンナイフや切り出しなどは上記の方法と異なります。
「刃体と柄部の区別が明らかでない切出し、日本かみそり、握りはさみなどの刃物は、刃物の両端を結ぶ直線の長さを測り、 その長さから8センチを差し引く」コレに当てはまると切っ先から刃が終わる所までがたとえ4.5cmだったとしても、全体が14cm以上あれば、それは刃渡り6cmとみなされるので注意が必要です。

制限を受ける模造刀剣類〔条例22条4項より抜粋〕

「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、模造刀剣類(金属で作られ、かつ、刀剣類に著しく類似する形態を有する物で総理府令で定めるものをいう。)を携帯してはならない。」
と書いてある通り、たとえ刃がついていない模造品でも携帯することは出来ません。形状も前に書いた刀剣類に見た目がにているのなら適用されます
コレは余談ですがあるお笑い芸人が舞台で使った小道具の「血糊のついた模造ナイフ」を自動車のトランクに入れていたところ、検問でそれを警察官の方に見つかり、大騒ぎになったと言う話があります。いくら模造品の刃が無い物でもそのままでは捕まってしまう可能性があるので携帯する場合は厳重に梱包する必要があります。

参考:携帯と所持

ちょっとややこしい話になりますが、法的概念の中では携帯と所持は別の意味として捉えられます。コレを思い違いしているとえらい事になってしまう可能性もあるので、理解しておきましょう。
所持:「自身がその物を事実上支配していると認められる状態」の事をさします。購入して家に保管する場合もそうですし、他人から預かったり、修理のために委託された刃物を保管する場合もコレに当たります。家等で管理する「保管」・正当な理由がある場合で、その場所まで持っていく「運搬」・同じく正当な理由での「携帯」なども所持の範囲内とみなされます。
携帯:野外、屋内ともに公共の場で使用者が手に持つ、腰に下げる、またはそれに近い状態で「すぐに使える」と判断される状態の事をさします。逆に自宅及び居室内での「携帯」はコレに当たりません。運転中の車にナイフが転がっていれば「携帯」になります。
所持の一部とみなされる「運搬」の場合でも、厳重に梱包してすぐに使える状態に無いことが前提です。ナイフなどを持ち歩くときはこのことに気をつけ、変な疑いをかけられないようにしましょう。

制限を受ける刃物〔条例22条より抜粋〕

前に書きましたが刀剣類以外のものは全て刃物になります。包丁でも、カッターナイフでも、全て刃物です。
条例にも「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、総理府令で定めるところにより計つた刃体の長さが六センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。」書いてあります。違反すると1年以下の懲役または3万以下の罰金を課せられます。さらに、たとえ6cm以下でも自由に持ち歩けるかと言うとそうではなく、やはり一定の配慮が必要です。
例えばカッターナイフを刃渡り5cmになるように実際に計って調整し持ち歩いていてもパッと見て6cm未満だと判断できる人はあまりいないと思います。さらにシース(鞘)に入っていたらなおさらで、実際の刃渡りなんて取り出して見ない限り解りません。軽犯罪法第1条の2には「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他、人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに 使用されるような器具を隠して携帯していた者は拘留または科料に処する」と有り、明確な刃渡りに関する記述はありません。たとえ銃刀法に違反しないナイフだとしてもそれを理由無く携帯していれば「隠し持っている」lことになり、罰せられます。
しかし、正当な理由がある場合は6cmをこえる刃渡りを持つ刃物でも所持は許されています。この条例も「意味も無く街中で携帯していると違反する」と言う事なので、正当な理由がある場合(ハンティングやアウトドアで使うために腰に吊るしている等)は除外されます。しかし使い終わったら正当な理由がなくなるわけですから、疑い(容疑)がかからないように、忘れず厳重に梱包してバックにしまうなどすぐ使える状態にしておかないでください。
どんな刃物でも他人にしてみれば十分恐怖感を与えてしまう可能性があるのは事実です。刃物を取り扱うときは責任と義務が生じることをちゃんと理解して使うようにしてください。間違っても剥き身でポケットに突っ込んでおくなんてしたらだめです。

参考:正当な理由

何度も書きましたが正当な理由とは具体的に「一般的な常識に照らし合わせて理解できる理由」ということを指します。
釣りやアウトドア・仕事で使うことはもちろん、そういった場所で使用するための往復路、購入して家に持ち帰る帰路や修理、研ぎなどのメンテナンスのために専門店に持っていくことも正当な理由の一部とみなされます。
逆に護身用・何となくカッコいいからなどの理由は、「人に向けて(加害に)使う」ということと同様とみなされ、罰せられます。
あくまで道具として使うことを正当な理由とします。武器として人体に向けることは絶対に避けるべき事です。もう少し言うと釣りやアウトドアで使う場合も使う場所についてから身に付けるべきで、そこまでの移動中は厳重に梱包するなど安全に配慮した使用を心がけてください。